

大丸松坂屋百貨店は、松坂屋が400年、大丸が300年の長い歴史を持ち、時代の変化に対応しながら今日まで営業を続けてまいりました。これは日々の事業活動を堅実に行ってきた結果と言えますが、堅実さだけでは今後は乗り切れないと考えています。
ご存知の通り、百貨店を取り巻く状況は厳しいです。かつては日本の小売業の上位を百貨店が占めていましたが、今では小売の販売額約140兆円のうち、百貨店は6兆円を切りました。
さらに新型コロナウイルスの感染拡大が、時間と場所に制約がある店舗での営業をビジネスの中心においてきた当社に影響を及ぼしているのも事実です。一方で当社は、この変化にしっかり対応し、成長していくために、ビジネスモデルの転換を急速に進めています。
その一つは、既存事業のデジタル化です。既存のビジネスに、スマートフォンを中心にしたオンラインを組み合わせることで、取り組み次第では業界トップに立てるカテゴリーを育てています。
もう一つは、オンラインの新規事業です。3月からアパレルブランドと提携して、ファッションサブスクリプション事業をスタートします。百貨店のコアな部分は変えずに、デジタルというアセットを使って、成長していく考えです。
この採用サイトで掲げている「常識を壊せ、未来を創れ。」は、危機を乗りこえるために必要な発想です。私も長く勤務した大丸神戸店で、それまでの常識にとらわれずに未来を創造した場面に関わってきました。
1980年代に手がけた旧外国人居留地の再開発では、古い石造りの建物に様々なラグジュアリーブランドを誘致するなど、神戸でしか手に入らないものを揃えました。その結果、大阪などからもお客様を呼びこめるようになり、やがて神戸の中心地だった三宮地区の百貨店を逆転して、地域の一番店の座をつかんでいます。
もう一つは、1995年の阪神・淡路大震災です。倒壊の被害を免れた3分の1の面積に、わずか3カ月で新しい店を作り、被災地で最も早く営業を再開しました。従業員食堂で寝泊りしながら、毎日深夜までフロアづくりに取り組み、再開できたときは感動的でした。ちょうどライフラインが復旧しはじめた時期で、生活に対する欲求や、潤いのある生活を求める気持ちに応えることが、百貨店の役割だと改めて実感しました。
震災の時は体力と根性で乗り切りましたが、現在の危機には通用しません。必要なのは「百貨店の再定義」です。店舗は小売の場所ですが、価値の高いものを探して、お客様にその価値を伝えていく場所でもあります。
そう考えると、百貨店の店舗は、メディアを志向するべきだと考えています。キュレーションしたコンテンツを紹介する場になることで、小売以外でも利益を得る手段が出てきて、ビジネスモデルを変えることができます。
さらに、同時にオンラインでもメディアを持つことで、オフラインとオンライン両方のメディアでお客様にアプローチすることが可能になります。価値の高いものをコンテンツとして育てて、紹介していくことで、新たなビジネスを生み出すことができると考えています。
当社は現在、大きな変革期を迎えています。この先10年はかかると考えられていたデジタル化を、1年で実現できるようなスピードで進めながら、将来的には百貨店という分類にはおさまらない企業になることを目指しています。その点からも、みなさんが活躍できるフィールドは、小売の現場や店舗の空間づくりに加えて、財務、データ解析、オンラインの新規事業など、幅広い分野にわたります。好奇心を持ち、感受性が豊かで、人生を楽しみたいと思っている人をお待ちしています。
2021年2月当社を取り巻く環境は、テクノロジーの進化をはじめ、従来にも増して変化のスピードが速く、グローバル化の進行や地政学的リスクの高まりも相まって、その不確実性が一層高まっています。
こうした経営環境の下、当社は、持続可能な成長実現に向け、今後の企業変革を担い、未知の領域を切り拓き、新たな付加価値を創造するのは「人財」のみであり、「人財」の成長なくして企業の成長・発展はあり得ないと考えます。このため、改めて「人は宝(財)である」との認識に立ち、一人ひとりに徹底して向き合うことで、人財力を開発する、人財開発企業の実現を目指しています。
そのためには、「自分で考え行動すること」、「失敗を恐れず挑戦すること」を第一義としながら、新しい発想を柔軟かつ積極的に取り込み、自らの人財力を磨き続けることが大切と考えます。会社は、仕事を通じた自律的な成長を全力で支援し、一人ひとりの人財力を最大限引き出すことに注力し、それぞれの人財力を遺憾なく発揮できる機会を広く求め、積極的に活躍できる場を設けていきます。だからこそ、世の中や自分の周りをこうしたいという夢や想いに向かって突破力や変革力を発揮する型にとらわれない人財、「好き」をエネルギーに変えられる人財を求めているのです。
大丸松坂屋百貨店は、300年、400年の歴史をつなぐ上で、いつの時代においてもお客様の生活をより豊かにする新しい提案をしてきました。くらしが、スピード感をもって移り変わっていく今だからこそ、少し先の未来に向けて彩り豊かなくらしを求めるすべての人に、5年後の未来に定番になっている幸せな生活スタイルや体験を提供する、未来の目利きキュレーターのような存在になる。お買い物の場としてではなく、発見や驚き楽しさなど、新たな体験価値を生み出せるおもてなしの場、そんな5年先の「未来定番生活」を提案すること、是非、一緒になって創出していけることを楽しみにしています。
2023年2月※所属部門は取材当時のものです