

PROJECTS 01
ビジネスモデルを変革する
大丸松坂屋百貨店のDX戦略
大丸松坂屋百貨店は、澤田太郎社長が就任した2020年5月から本格的なDX戦略に舵を切りました。社長直轄の部署として、デジタル事業開発部を2020年9月に新設。岡﨑路易部長が中心となって、既存事業のデジタル化と新規事業の開発に取り組んでいます。澤田社長と岡﨑部長にDX戦略の狙いと、必要な人財についてうかがいました。
大丸松坂屋百貨店は、澤田太郎社長が就任した2020年5月から本格的なDX戦略に舵を切りました。社長直轄の部署として、デジタル事業開発部を2020年9月に新設。岡﨑路易部長が中心となって、既存事業のデジタル化と新規事業の開発に取り組んでいます。澤田社長と岡﨑部長にDX戦略の狙いと、必要な人財についてうかがいました。
代表取締役社長
1983年
株式会社大丸入社
2011年
大丸神戸店店長
2012年
大丸大阪・心斎橋店長
2017年
同社取締役、同社常務執行役員
2018年
J.フロント リテイリング株式会社
取締役、同社執行役常務
2020年
株式会社大丸松坂屋百貨店
代表取締役社長
デジタル事業開発部 部長
2004年
株式会社大丸入社 大丸神戸
店住文化用品リビング雑貨売場
2008年
本社業務統括室財務担当
2015年
J.フロントリテイリング株式会社
経営戦略統括部経営企画部
M&A事業提携チーム
(持株会社出向)
2018年
大手IT企業へ入社
2020年
株式会社大丸松坂屋百貨店へ再入社
大丸松坂屋百貨店のDX戦略
既存の分野で最初に取り組んだプロジェクトは化粧品です。百貨店はハイグレードでラグジュアリーなコスメを揃えていて、販売シェアも高く、世の中にも認知されています。けれども、オンラインでは総合的なEコマースの片隅にあるような存在でした。それを化粧品だけで自立させて、新しい顧客体験ができるサイトを作っています。
既存のサイトにも、良いものが財産としてありますよね。当社の外商は、WEBやアプリで見ることができるコミュニケーションサイトを、競合の他社よりも早く作っていました。このインフラは強みです。これをさらに多くのお客様に見てもらうための戦略が重要ですね。
外商のサイトは出来もよくて、いいお客様もついています。もっといい記事を出してアプローチできるように、各部署にお願いしているものもあれば、プロジェクトとして進めているものもあります。
デジタルだけでは規模と網羅性の面から見るとプラットフォーマーには敵わないけれども、うまくやれば特定の分野では十分対抗できる力が百貨店にはあると思っています。本当にそうなればいいですね。
会社を起点にして働いてきた時代から、半分は家で働くようになるなど、コロナ禍でライフスタイルが変化しました。同時に、生活をより豊かにするための考え方も変わっていくと思います。新しいことを提案していけば、デジタル関連やEコマースの企業だけが業績を伸ばすのではなく、これまで店舗を中心に展開してきた私たちだからこそのチャンスもあるはずです。
大丸松坂屋百貨店のDX戦略
これから入社する人には、私たちを小売業や百貨店のセグメントでは見ないでほしいですね。私たちは10年後には、どの産業の分類にも属さない企業になっていきたいと考えています。ただし、百貨店のコアな部分を変えるつもりはありません。百貨店として残る部分はあるけれども、トータルとしては全然違う企業になるイメージです。
私は人の力を信じることができるデジタル人財が、これからますます必要になると思っています。ともすれば、AIやシステムの中だけで、何でもできると思う人もいるかもしれません。でも、今回再入社して驚いたのは、店舗でのアプリ登録状況を分析すると、ダウンロードして会員登録までする確率が非常に高いことです。販売員が勧めて、使い方や目的まで伝えるからこそ、会員登録をしてもらえる。実際に店頭でアプリをダウンロードしていただいたお客様に発信すると、一般的なデジタルの世界では考えられないほどの反応が返ってきます。そういう人の力を介したDXに可能性を感じています。
百貨店が成長するための推進力になるのは、間違いなくデジタルです。今の若い人はデジタルネイティブなので、デジタルへの対応についてはあまり心配していません。データが解析できるとか、アプリを作れる人も大歓迎ですが、それ以前に美しいもの、おいしい食べ物など、いろいろなことに関心があるといいですよね。どんどん興味が湧いてくるような人は、百貨店でDXを進めることにも向いていると思いますよ。
※所属部門は取材当時のものです
DXは新規事業だけでなく
既存事業も成長できる
弊社のデジタルを活用した取り組みは、これまでメールやアプリでお客様とコミュニケーションするくらいで、正直言ってDXにはほとんど手がつけられていない状況でした。デジタル事業開発部を立ち上げたのは、オンラインの部分をスマートフォン中心のビジネスモデルに変革するためです。これを実現するために社内の人財だけでは難しいと思い、当社から大手IT企業に転職していた岡﨑さんに声をかけ、再び弊社で活躍してもらうことになりました。最初はオンラインの世界で新しいビジネスを作ってほしいとお願いしましたね。
最初に言われたミッションはデジタルネイティブな新規事業です。スマートフォンベースやアプリベースで、お客様とつながるものをゼロから作っていくことでした。
それが、役員や部長から話を聞いているうちに、既存のビジネスにオンラインをうまく使えばもっと拡大できるというのが見えてきたので、方針の変更をお願いしました。新規事業と既存事業のDXを8対2くらいと考えていたのが、既存事業のDXをどんどん増やして、今では逆転していますよね。
既存事業のデジタル化は、いざ取り組み始めると、やることが多いことがわかりました。すでにかなり多くのプロジェクトが立ち上がっています。
新型コロナの影響で50日間営業を自粛したときには、顧客との接点が店舗しかなかったので、手も足も出ませんでした。一方で、既存事業のDXに取り組み始めると、売上のリターンが早いことがわかってきました。